奏でるものは 〜功介〜


3月のある日。


「ミリちゃんと旅行に行ってきなさい」



父親に封筒を渡されてその場で中を見ると、テーマパークのチケットとそのホテルの宿泊のチケットだった。



「ホテルは予約済だから、ミリちゃんと行ってきなさい、里島家も了承済だ」



「……わかったよ」


ゆっくり話し合って来いということなのか。
公認婚前旅行、ということなのか。
どちらにしても乗り気ではないが、断る理由も見つからない。
しぶしぶ、返事をした。



しばらくすると連絡があり、ミリにもチケットが渡されていたらしい。
行くしかないか、という気分だった。



結婚へ向けて、背中を押されたというか、引っ張り出された気分だった。







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