奏でるものは 〜功介〜
第12章


土曜日

9時半には全員黒のスーツで揃っていた。


「行こうか」


上着を羽織って、バイクで出発した。

昌に着いていき、大きな寺の駐車場に入った。


何か、大きな、重いものを感じた。



「ここ?」

龍がきくと

「いや、この寺の裏の山に……」



唯歌が眠ってる。



昌の言葉を、自分の胸で完結させた。


寺を通り過ぎて、階段を登る。広い墓地になっていた。

やっぱり花を持ってきたのは昌だった。


「この先の突き当りのはずだよ。

俺、水汲んでくるよ」


狭い道を、龍が先頭に歩く。広いが道から更に曲がる道もあり、複雑な迷路のように見える。


石の道の砂利を踏みしめて歩く。


『西田家』の墓石が3つ並んでいるのが見えた。


まっすぐ墓に行かず、立ち止まった龍を追い越そうとして、気付いて龍の横に並んだ。



新しい墓石の前に、座って祈る女。

長い髪が背中と俯いている顔を隠していた。



長い髪の女が頭を上げた。





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