ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「どうした」
葵の背後から、蒼佑も不審そうにドアに触れ、それから【開】のボタンを押したが、やはり扉はびくともしなかった。
「ん……開かない……?」
その瞬間、心臓がヒヤッと冷たくなる気がした。
葵は狭い所が少し苦手なのだ。
「非常ボタンを押してみよう」
蒼佑が落ち着いた声でボタンを押したけれど、返事はない。
「え、なんで……」
非常時に押すボタンがノーリアクションでは、非常ボタンの意味がないではないか。
唖然とする葵に、
「――葵、この非常ボタンはどこに繋がっているか知ってる?」
蒼佑は落ち着いて尋ねる。
「たぶん、管理人室……」
「二十四時間常駐なのかな」
「違うと思う……」
自分達が住むマンションは、そんな上等なマンションではない。
葵はぶんぶんと首を横に振った。