生き続ける意味 **番外編**




ヒカリちゃんは、ふっと笑った。




「恵まれてる子にはね、わからないんだよ。

私みたいな子はね、どこに行っても邪魔者扱いされるの。
親からも、施設の人にも、周りからも変な目で見られる。
おまけに、親がしでかしたことを、私を見る度に噂話する人もいるし……

どこにいても、居場所なんかないよ。桜ちゃんにはわからないだろうけど。

そうなったらさ、消えたい……いっそ死にたいって思うよ。」






「…そんな…。それでも、死んじゃだめだよ。死んだら……」



「じゃあ、私に居場所くれるの?!」


静まり返った部屋に、突如、大きな声が響いた。


ヒカリちゃん…

悲しみのような、怒りのような、見ていられなかった。



「友達をくれる?親をくれるの?

…そんなこと、誰にも出来ないんだから。」



そう言捨てると、ヒカリちゃんは走って部屋を出た。



「ちょっと待って…!ヒカリちゃんっ!」


あたしも慌ててあとを追いかけた。家を出て、病院から離れた奥の方に進んでく。


ヒカリちゃんっ……


見失っちゃ、ダメだ。追いかけないと。今度こそ、本当に会えなくなる…っ

そんな焦りと戦いながら、重い体にムチを打って、必死に走った。



「コホッ…ゲホッ」


…やばい。体が…

肩で必死に呼吸をするけど、どんどん苦しくなる。

頭もクラクラして、意識がもうろうとしてきた。



…あたし、わかるよ。ヒカリちゃんの気持ち。

本当は、死にたくなんかないんでしょ…?

ヒカリちゃんの表情や瞳を見ればわかる。きっと、助けてって言ってる。


だから、無意識かもしれないけど、あたしを連れてきたんでしょ?誰かに、助けてもらいたかったんでしょ…?

自分では止められないから…

だから、あたしにっ………



「はあっ……ヒカリちゃんっ!!」


届け、そう思って叫んだけど、もう限界だった。

あたしは、意識が途切れて、地面に崩れ落ちた。





< 181 / 212 >

この作品をシェア

pagetop