めはくちほどに

母が亡くなってからのことだった。

高校のときも言われたことがなかったのに、短大で付き合っていた彼にも、友達にも言われた。

「なんか変わったよね、しっかりしたっていうかさ」

友達にも彼にもお母さんが亡くなったことは話さなかった。

どうして? と聞かれるのが嫌だった。

「俺も。聞かれたらどっか行ったって言ってる」

海都が淡々と話すのを聞いた。

「急に帰ってこなくなって、捜索届を出そうとしたら、警察が来て」

それをまだ幼かった葉苗と星子は知らない。

「知らない男と一緒に死にました、なんて笑えないし」

< 28 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop