めはくちほどに

コップから滴った水滴の場所に手をついてしまったらしく、ずるりと滑った。

肘を打つ、前に二の腕を掴まれる。
大惨事にはならなかったけれど、結局コップをひとつ倒した。

「す、すみません」

副社長のワイシャツが濡れている。素早くコップを立てて、テーブルの端に置いてあった布巾を取る。

「いや、それより。君は大丈夫?」

「私は全然。わああ、麦茶色に、洗濯機に放りこんでおいてください。洗っておきます……家の洗濯機で洗って大丈夫なやつですか?」

「頼みます」

「本当にすみません……」

自分の落ち着きの無さに呆れて落ち込む。

< 44 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop