ノンストップラブ
「で、午後は予定ある？」

「今日は特になくて、買い出しくらいなの。」

「ふ～ん、買い出しね。」

誠の言う買い出しとは最低限の食料のみだ。

俺が把握している唯一誠の嗜好品といったらカフェ・モンドのカプチーノくらいだ。

家では決して嗜好品を口にしなかった。

例えそれがチョコレートのひとかけらであってもだ。

第一誠の部屋には菓子の類がなかった。

付き合い始めた頃聞いたことがある。

「甘いものが苦手なのか？」

「いいえ、大好きよ。」

「じゃ、なぜ何もないんだ？」

「作家デビューに願をかけているから。」

「悪い、聞くべきじゃなかった。」

「そんなことない。聞かれたから答えただけよ。気にしないで。」

またある時「どうして炭酸で洗うんだ？」と聞いた。

「スッキリするの。強炭酸の方がいいらしいわ。」

炭酸で洗顔？

俺には絶対真似できない。

なぜなら万が一目に入ったらと思うと危険極まりない。

俺がそう言うと

「心配無用よ。目はつむっているから。」

そりゃそうだが、なんというか全てに理路平然とした言葉が返ってくる。

反して誠は何も聞いてこなかった。

とやかく言われない分寂しい気もするが

いわゆる女っぽくない部分が多いせいか付き合いやすいとも思っていた。

半年以上平穏な付き合いが続くこと自体俺にとって特別だった。
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