ノンストップラブ
マリは最寄り駅の改札口を出て少し歩いたところで急に足を止めた。

「ごめんなさい。私の勝手であなたを困らせてしまって。ごめんなさい。」

顔を下に向けたまま涙声でそう言うマリの手を握った。

「俺のことはいいんだ。お腹の子の父親が羨ましい。俺にはできないことだから。」

マリは涙で濡れた頬のまま顔を上げた。

「あなたを傷つけてしまって本当にごめんなさい。」

「さ、今夜は泣くだけ泣き切って、明日からはいつもの君になって、きれいで明るくて笑い声が素敵ないつもの君にだ。」

俺はそっと涙をぬぐってあげた。

「うん、ありがとう。あなたも元気で。さよなら。」

俺はマリが通りを歩いて見えなくなるまで見送った。

彼女がどう決断したか不明だが、俺が見た最後のマリはきれいだった。

姿もきれいだが、自分の過ちを認め、俺に思いやりの言葉をくれたことに

彼女の本当の内面を見た気がした。

俺は今日も相性の合う女を探しつつ

出会った女と共有する時間を楽しみ

また会いたいと思える相手がいつか現れるだろうかと自問していた。

きっとどこかにいるはずだ。

それは報われない願いだろうか。
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