拾い物はイケメンでした。
「出来た!!」


マーガリンのいい香りが部屋いっぱいにひろがる。


「はい。おまたせしました。」


「わー!めっちゃうまそうやん!いっただきまーす!」


どうかな?気に入ってくれるかな?結構カロリー高いんだけど何も言われんかな?


「…………」


「ど、どうですか…?」


「めっちゃうまい!!!」



めっちゃうまい。



その言葉が私の頭の中いっぱいに広がる。

初めて人様に手料理を食べてもらった。

両親にも一人で作った料理は食べてもらえなかった。

そして、初めて作った料理を褒めてもらえた。


「……あれ…」


気づくと私の目からは嬉しさのあまり涙があふれてきた。

「え!?どうしたん!?あれ。俺変なこと言った!?え、ちょ。えぇぇ…なんで泣いてんの!?」


「ごめんなさい…嬉しかったから。おいしいって言ってもらって。」


止めようとするほどあふれてくる涙。

こんなに嬉しかったことなんてないかもしれない。

「そ、そうか…?ならいいんやけど…」


こんなに嬉しくて、満たされて、泣いちゃうなんてどうしたんだろう。私。


「ごちそーさまでした!めっちゃうまかった!ありがと!」


目の前に座る彼はキラキラした笑顔で私を見つめている。

「いえいえ。お口に合ってよかったです。」

めっちゃイケメンで、笑うと可愛くて何なのこいつ。

なんかズルい。


「……ふわぁ…眠くなっちゃった。」


「あ、じゃあ、そこのソファーで寝ていいですよ!」

「ありがと!明日は土曜日だからゆっくり寝かせてね」


ん?


「あ、はい。わかりました」


「ん。おやすみー」



…あれ?


ここ、私の家だよね?

そしてこいつ、私の家に

”泊めてもらってる”んだよね?

何が「明日は土曜日だからゆっくり寝かせてね」だよ。

私が起きる時間に起きなさいよ!

と言うか起こす。


イケメンだからって調子乗ってんじゃないわよ
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