青い空の下、僕たちは今も

"こい"






並ぶ傘

無言でいつもの道を歩く


こいつから話してくることって滅多にないんだよな、とか

だったら俺が話しかけなきゃ無言なの当たり前か、とか

じゃあ別に一緒にいる意味ないんじゃないの、とか


「棗」

「何?」


こうやって名前呼ばれるのもあと何回だろうな、とか


「家」


こうやって単語で話されることもなくなるんだな、とか


「あ、うん、じゃあな」

「違う、上がって」


何となく、わかってた

わかるよ、それくらい


「…嫌だ」


何度も上がったことのある家

初めての時も、親がいる時すら入ることを躊躇わなかったのに


「時間、ないの?」

「…あるよ」


戸惑った顔

珍しい


「嘘だよ」

「え、」


最後の悪あがきだってそんな顔されたら諦めるしかない


…悪あがき?

なんだ、それ


諦めるって、何を?




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