わたしが小説を書くように
 先生は、落ち着き払った様子で席に座り、穏やかに司会者としゃべり始める。

「少し、痩せたかな……」

 わたしは、テレビに歩み寄った。

 相変わらず、先生はハンサムだ。

 イケメン、なんて軽い言葉で表せない。

 このひとに、わたしは抱かれたんだ。

 そう思うと、胸がきゅうっと苦しくなった。

「自分から、離れたはずなのにね……」

 苦笑しながら、それでも、指で先生の映った画面をなぞる。

 涙がぽたり、足元に落ちた。
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