リナリア
県外の大学を受けたい。

と、兄は真面目な目をして言った。


大学は四年制で、他県からの生徒が多い。
さらに野球が強い。
私の家から車で五時間以上はかかる。
就職率もさほど悪くない。

兄は少し嬉しそうに話した。
大学に行ってやりたいことがある、
と意気揚々に語っていた。

私はそんな話、
全くと言っていいほど
耳に入ってこなかった。



兄がこの家から居なくなる。

その事実だけが頭の中をぐるぐるしていた。
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