午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
手を取って冷やしながらにこにこと笑う心に、シリアは複雑な目を向ける。

「ココロ様、誰からそのような話を……」

「んー? 陛下からだけど」

あっさり言われた言葉に、唖然とするしかない。

「だからね、ちょっと……気になって。私が来たことで、シリアの立場が悪くなっちゃったんじゃないかな?と」

気遣うように呟いた心に、シリアは小さく微笑んだ。

その微笑がどれほど珍しいかを知らない心は、ホッとしたように笑う。

「あ!そういえば、休憩時間にって、グランがデザートを作ってくれたみたいなの。ちょっと取ってくるね」

ひらひらと手を振り、心は部屋を出て行った。

それを見送り、水に浮かんだ氷を手でチャプンと揺らす。

シリアは静かに目を閉じ、過去に思いを馳せた。
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