午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
そのきっかけは、シリアの姉であるジュリアにあった。

ジュリアは陛下の側室候補であったにもかかわらず、魔王の側室なんて嫌だと言い放ち、家を飛び出してしまったのだ。

そして今、その皺寄せがシリアにきている。



「わかってるの? この家の存続にかかわる事態なのよ!
あなたがジュリアの代わりに城に行くしかないのに……愛想笑いの一つもできないなんて!!
どうしてニコリとも笑わないのよ!? 馬鹿にしてるんでしょう私を!!
その冷めた目で見ないで!」

ユースリアが上げる金切り声を、シリアは無感情のまま聞いていた……否、耳に入れていた、と言うべきだろう。

「皆があなたのことを、なんて呼んでるか知ってる!?
人形姫よ!
ノースヴァン家の、無表情で無感情な人形姫!!」
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