午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
城の者たちに心の存在は知らされているものの、まさか下働きをしているとは夢にも思わないのだろう。

心の顔を知らない者は、道を聞くたびに「新入りか?」「これからよろしくね」「見ない顔だな」などと、親しげに接してくれる。

外は真っ暗だったが、所々で魔力の光が灯っているため、歩くことには困らなかった。

庭園に近付き、庭師の姿を探す。

節榑立った手をもつ初老の庭師は、心を孫のように可愛がっており、心も彼を自分の祖父のように感じていた。

彼の花に対する知識と愛情は、魔界一と言っても過言ではなく、庭園の花はいつも瑞々しく咲き誇っているのだ。
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