眠り姫の憂鬱。


「じゃあな」

楓が私を置いて人波に紛れていく。

今日も彼はつれなかった。


そうこうしているうちに楓と入れ違いで真依が目の前まで来ていた。


「おはよう…、変な顔してるけどなんかあったの?」

「へ、変な顔?」

「困り眉なのに口が緩んでる」

「わっ、」


慌てて頬を両手で押さえた。

それはさぞかし気味の悪い顔だっただろう。

真依はそんな私を不審そうに見ていた。


だから弁解するためというわけではないけど、ショッピングモールへ向かう道中で先程あった出来事を真依に伝えた。


「へー、三郷くんが?」

「そうなの!もうヒーローそのものだった」


思い出しただけで口元の緩みが復活してしまいそう。


「まだ気持ちは変わってないのね」

「変わるどころか、たぶんもっと好きな方に向かってると思う」


私が片思いのまま、人を恋愛対象として見続けるのはこれが最長記録。


約まるところ、楓は私の運命の人というのが正しいと思う。

という結論付けは八割方、私の願望で構成されているのだけど。


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