愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
 どうしよう、こんな落ちぶれた今の生活、言えるわけない――。

 鷹野部長の期待を裏切るようで、私は本当のことを言う勇気がなかった。うちの親戚のように、今まで懇意にしてくれていたのに、借金まみれになった途端、急に手のひらを返されるような辛い思いはしたくない。

 そう、鷹野部長はなにも知らなくていい――。

「あの、失礼します!」

「あ! ちょ、待てって――」

 居た堪れなくなった私は、呼び止める鷹野部長を無視すると、さっと身を翻して会議室を飛び出した。
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