眠り姫の憂鬱
辺りが明るい光に包まれている。

ゆっくり目を開けると、鈍い痛みも一緒にやってくる。

白い天井、白い布団、規則的な電子音、
…ここは病院?

「美月(みつき)、美月!気がついたのね。
お父さん、美月が目を開けたわ!」と涙を流す中年の女性が私の手を握っている。

「美月、わかるか?
今、先生を呼ぶからな!」お父さんと呼ばれた男性も涙を流しながら私の顔を覗き込む。

「…頭…痛い」と掴まれていない手を頭に伸ばすと、髪の毛の感触はなく、柔らかい布の様な…包帯?ガーゼ?

「美月、触っちゃダメよ。今、先生が来るから…」


言われている言葉はわかるけどやたらと眠い。

「…だ…れ…?」と思った事が口に出る。

覗き込んでいるふたりの顔が強張っていくのがわかる。


「美月!私達が誰かわからないの?!」

…知っているひとなのかな?

この状況って?


「…お父さん…と…お母さんですか?」と聞くと、

女の人は嗚咽し、

「美月、お母さんと、お父さんだよ。…でも、僕はお母さんの再婚相手で…
君は『島田パパ』って呼んでた。
…僕達が誰かわからないんだね…」と言いながら男の人も涙を流している。


私はゆっくり頷き

「…少し…寝てもいい?」と眠さに勝てずに呟くと、

「いいよ。眠って。
…ゆっくり眠りなさい美月
…大丈夫。きっと思い出すよ。」
と『島田パパ』は『お母さん』の肩を抱きしめた。


…思い出す?

お母さん

島田パパ

ミツキ…は私かな…

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