眠り姫の憂鬱
「ショウゴさん!!」と私はガウン姿でバタバタと階段を駆け下りる。

「美月、カフェオレ飲む?」と澄ました顔をつくって、食卓で新聞をながめながら、コーヒーを飲んでいるけれど、

「私は池谷さんとお付き合いをしていませんでした!」とショウゴさんを睨むと、

「あらあら…」
と涼子さんは呟いて、私のカフェオレをいつものショウゴさんの前の席に置いた。

「でも、事故の前の日キスしたろ。」

「あれは、ショウゴさんが勝手に!」

「でも、『明日ここに来て』ってカフェの前で約束して、美月は約束通り、カフェに行こうとしてた。」

「だって、理由も言わずにキスしたから…」

「俺はあの日、ちゃんと『竹之内 将吾』」として会おうとしてた。ま、美月が事故に遭って会えなかったけど…」

「…」

「付き合う前だってことだけ言わなかっただけだよ。俺は結婚したいっておもって、正体を明かそうとしてたし…とっくに美月を愛してた。ここに連れてきてからも、行儀よくして、襲ったりしなかった。ちゃんと美月が俺を好きにになってから、抱き合っただろ。」

「…」私は言葉が出ない…

「…やれやれ」
と騒ぎを聞きつけた寺田さんもため息をついている。

「美月も、ちゃんと俺が好きだっただろ」
とショウゴさんは憎めない笑顔をみせる。

「そ、そういう問題じゃあ…」

「もう、婚姻届けにサインも済んでるし、3日後は結婚式だ」

「…」

「愛してるよ、美月」
と私を抱きしめ、頬にキスをする。

「…私も愛しています。」とふくれっ面で見上げると、

「ありがとう、奥さん。」と満面の笑みを見せて、私に深くくちづけをした。

〜〜Fin〜〜
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