君と見上げた空はもう一度
「やっぱり私は一番ここが好きかな。」
「俺もだよ。」
「ここで陸と会って空の話をして、それから陸と仲良くなって、毎日一緒にいた。それで陸のこと、いつしか好きになっていた。多分この気持ちは今も、これからも。あるんだったら来世まで、変わらないと思う。」
「ありがとな、綾。俺がもう一度会いにいくよ。約束だ。」
「うん、待ってるね。」
私の呼吸がだんだん荒くなっていく。
「陸、最後に聞いて。」
うん、と言う陸の目から涙があふれる。
私はその涙を優しくふき取った。
「泣かないで、陸。私は陸のなかの悲しい記憶じゃなくて幸せな記憶でありたい。涙じゃなくて、笑顔でありたい。私のことを思い出すたびに笑えるようなそんな思い出でいさせて?だから、陸。ほら、笑って?」
綾はいつもと変わらず優しく微笑む。
「ああ、笑顔でいるよ。」
涙は止まらないが無理にでも笑う。
「陸に会えて良かった。本当に。」
「幸せだった。綾といられた時間。どれだけ離れていても、どれだけ時がたっても、ずっと大好きだよ。」
俺は綾を強く抱きしめた。離れたくないと思うたびに涙がこぼれる。
俺を抱きしめていた綾の手がゆるまり、綾の体が崩れた。
「綾、なぁ綾?」
いくら呼んでも、ゆすっても、返事は返ってこない。
それでも綾の体を強く抱きしめる。
「もっと、もっと側にいたかったよ。綾。」
短くて長い綾と過ごした日々は終わった。
そして俺の時間は止まった。
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