飛べない鳥に、口づけを。






「川口、小沢さんの薬の監査しておいてくれるか」




小沢さんと聞いて飛び上がった。

だが、これ以上私情を仕事に持ち込んでいけないと言い聞かせる。




樹君と連絡を絶って、樹君のことは忘れた……なんてことは全くなかった。

いなくなればそれだけ、樹君の大切さに気付いた。

仕事で疲れても、樹君を思い浮かべると頑張ることが出来た。

こんなにも好きなのに諦めないといけないなんて、神様は大きな試練を与えたものだ。

あたしは黙って小沢さんの薬を持ち上げた。


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