飛べない鳥に、口づけを。
「やっとつかまえた」
樹君の切なげな声が鼓膜を震わせる。
それは、あたしの台詞なのに。
「ごめんね……」
発せられたあたしの声は震えている。
喉から絞り出すように、樹君に告げる。
「勝手に消えてしまって……ごめん」
樹君はあたしのことをなんて思っているのだろう。
あたしを精神的支えにしてくれていたのは昔の話で、今はもう興味もない。
そんな妄想が頭をよぎる。
樹君はあたしを求めてくれていたのに、あたしは勝手な思い込みから樹君を裏切ったのだ。