赤い糸
 夫の手でしっかりとにぎられた中で美智子の手は力を失くした。

 二人を繋ぐ糸は真っ白に強く光輝き、消えた。

 美智子のからだは軽くなり、ふわりと宙に浮かんだ。

 導くようにあたたかく柔らかい光が照らす。
 
 美智子は自分が死んだのだと分かった。

 美智子を呼ぶあたたかい光にすい寄せられるように美智子は昇天しようとした。

 その時、

「美智子。美智子」

 自分の名前を呼んですすり泣く声に気づき見おろす。

 年老いた夫が弱々しく肩をふるわせて泣いていた。
 まるで雨の中すてられた子犬のようにみすぼらしく小さく見えた。

 美智子は夫の隣なりに舞い降りた。

「あなた」

 夫の右手を取り、その小指に赤い糸を結ぶと自分の左小指にその先を結びつけた。

「生まれ変わったら、また一緒になりましょうね」

 美智子は微笑えみ、今度は振りかえらずにまっすぐに光の中へと消えていった。
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