曖昧ストラテジー【短編】
まぁ、いっか。


もう一度軽くため息をついて、顔を伏せた。


眠ってしまおう。


そう、思った時。


何かが私の右腕をつついた。


まさか、虫?それとも、先生?


慌てて顔を上げ、腕を見、それから周りを見渡す。


けれど、虫も先生もそこにはいない。


代わりに、右側からぬっと伸びる、白い手。


グレーのニットは袖が少し長すぎるようで、手のひらが半分隠れてしまっている。


それが、また私の心をくすぐっている事なんて、飯島は、きっと、知らない。


その手のひらの上には、私の落とした消しゴム。


細い指を揃えて、そっと私に差し出してくる。


控えめなそれに、おもわず笑ってしまった。


飯島らしい。
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