曖昧ストラテジー【短編】
俺のターン
黒縁のメガネを、久しぶりにかけてみる。


一瞬世界が歪んで、それからクリアになった。


1時限目、現代文。


正直に言おう。


俺は、完全な理系脳だ。


だから現代文は苦手。定期テストはいつも平均以下。


だけど、この時間は苦痛じゃない。


だって、現代文は。


「あれ?飯島メガネ?」


隣の席の江口が、一番イキイキする科目だから。


驚いたように俺を見る江口の右手には、いつかのような金色の時計ではなくて、シンプルな黒のそれ。


あの日はいったい、なんの気まぐれだったんだろう。


「普段はコンタクトだけど」


そう言うと、江口は「へぇ」と呟いた。


それから、何かを言おうとしたのか口を開く。


けれど。
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