天国からの贈り物 下期
9月 初めての舞台の前日

夏休みが終わり、私たちはイベントに向けて最後の追い込みをしている。

イベントまで残り1週間。

鈴「何とか間に合いそうだね(^^)」

陽菜『まだ、少し修正はあるけどね…。』

寮に戻って来てから毎日暑いといいながら、練習をして、みんな休まずに来てくれてる。

翼『ちょっと飲み物買ってくるわ( ̄▽ ̄)』

鈴「私も飲みたいから一緒にいい?」

翼『おう!みんなは?何か買ってこようか?』

結局、全員飲むらしくオーダーを取った。

翼『2人じゃ無理だな。誰かもう1人来てくんね?』

「別に大丈夫じゃない?2人でも。」

翼『イベント近いし、怪我されたら困る。』

天『俺が手伝う。』

翼『あざす( ̄▽ ̄)』

そして3人で買いに行くことになった。天先輩とは学園に帰って来てから全然喋っていない。先輩を見るたびに鼓動がうるさくなる。

翼『よしっ!!これで全員分だな!』

「結構あるね。確かにこれは2人じゃキツイね(-.-;)」

天『少し持つ…』

天先輩が私のとこから飲み物を取ろうとした時に、先輩の手が触れてビックリして飲み物を落としてしまった。

「あっ!!ご、ごめんヽ( ̄д ̄;)ノ」

天『ったく!何やってんだよ。』

文句をいいながら、2人とも拾ってくれた。私たちは音楽室に戻り練習を再開して、あっと言う間に帰る時間になった。

翼『疲れたぁ帰ろぜヽ( ̄д ̄;)ノ=』

「ごめん、私はちょっとやることあるから、みんなは先に帰って(^^)」

陵『え?でも、もう暗いし…。』

「大丈夫大丈夫!ごめんね(^^)」

みんなは先に帰って、私は音楽室に残った。天先輩と祭り以降、目が合うだけで鼓動が早くなったり、逸らしてしまう。好きだと気づいた途端こんなんじゃ、この先はどうなるの。

「あぁぁぁ!ダメだ!」

私は気持ちがごちゃごちゃになり、落ち着かせる為にピアノを弾いた。

♫〜

ピアノで弾いてるのは、メヌエット。この曲を弾いてると心が穏やかになる。そう言えば、秀ちゃんが弾くと私の子守唄になってたなぁ。

「天先輩が弾いたらどんな感じの音になるんだろ…。」

私は大分落ち着いた頃には、夜の21時をまわっていた。結構遅くなっちゃったなぁ…。

「来週が本番か…。」

『遅い!』

「えっ?!」

校門をでるといきなり声がしたので、振り向くと天先輩が立っていた。何でこんなところに…気まずい…。

天『お前はこんな時間まで何してたんだ?』

「え…気持ちの整理とか…本番のイメージトレーニングとか…。」

本当は天先輩の事ばかり考えて、全然イメトレできてないけど…。

天『お前さぁ、最近俺のこと避けてねぇ?』

「え、そっそんなことないよ。たまたまじゃない?天先輩を避ける理由ないですから。」

天『じゃあ、何で目を逸らすんだ?』

「気のせいだよ…。」

天先輩は私の腰に手をまわし、もう片方の手で顎をあげて強制的に天先輩から逃れられない状況になった。

天『だったら、俺の目を見て言え。』

「ちょっちょっと!やめて…。」

天『じゃあ、避けてる理由言え…。』

「だから、避けてない…。だから離して…。」

天先輩の力は強くて、力を入れてもビクともしない。天先輩の目を見たら全てを見透かされそうで怖い…。

天『だったら、目を背けるな。』

「もう…嫌だ…。お願いだから離して。」

私はいつの間にか体が震えて泣いていて、天先輩はようやく離してくれた。私はもう耐えられず走って寮に戻った。その日から天先輩の姿を部活以外に見ることはなかった。

イベント前日。

翼『ついに明日かぁ(-.-;)緊張すんなぁヽ( ̄д ̄;)ノ』

陽菜『大丈夫よ!舞台で上がったら隣の人の顔を見れば(^^)』

翼『でも、天先輩…いい加減機嫌なおしてくださいよ…。この前からずーっと不機嫌で、何かあったんなら言ってくださいよ!』

陽菜『機嫌悪かったの?いつも無表情だからわからなかった。』

陵『珍しいよな。こんなに不機嫌が続いてるの。』

奏多『2人ともあんまり刺激与えるとー。』

奏多先輩が忠告途中に天先輩は2人に季節はずれの落とし玉をプレゼントした。2人ともうずくまって頭を押さえている。

奏多『だから、言ったのに…。』

陽菜『そう言えばさぁ、鈴はどこにいるの?まだ来てないけど…。』

翼『それがさぁ、今日学校来てないんだよ。』

3人『は?』

陽菜『でも、朝登校してたよ?』

翼『まじ?どこにいるんだろうな。』

カチャッ

「よいしょっと。はぁ〜疲れた〜。」

『鈴!!』

私が音楽室に着いた時、みんなが私のところに駆け寄って質問責めをしてくる。

「ごめんごめん(^^)ちょっとこいつの仕上げをしてて…。」

翼『何だよこれは…。差し入れか?』

翼は私が持って来た箱をあけた。みんながそれを覗くように見る。

陽菜『鈴、これって…。』

「明日の衣装だよ(^^)いやぁ〜間に合ってよかったよ。」

陵『マジか!!すげぇいい衣装じゃん!』

私はみんなに衣装を配って、試着するようにお願いした。イメージは童話のヒロインとその童話の役をイメージした衣装。
陽菜先輩は白雪姫をイメージした衣装。
華先輩は人魚姫をイメージした衣装。
翼は白雪姫の小人をイメージした衣装。
陵先輩は人魚姫の王子様をイメージした衣装。
奏多先輩は白雪姫の王子様をイメージした衣装。
天先輩は天の神をイメージした衣装。
そして私は天の神様を慕う妖精の衣装。

陽菜『ちょっと恥ずかしい…。』

「先輩!!めっちゃいい(≧∇≦)ねっ奏多先輩!」

奏多『えぇ。すごい似合ってます…。』

陽菜『ありがとう。奏多くんもなかなか王子役似合ってる…。』

2人の世界に入ってしまった…。私はその場からそっと離れ、翼と陵先輩のところに移動した。

翼『鈴、いくら俺が小さいからって酷くねぇ?小人って…。』

陵『あはは!でも、すげぇ似合ってんじゃん。』

翼『先輩は王子様役だからいいじゃないですか!』

「翼はいつもそばで支えてくれるから、小人役が似合ってるんじゃないかなぁと思いながら縫ったんだけど…気に入らなかった…?」

私がしゅんとすると、翼は慌てて喜びだした。やっぱり翼は優しい。陵先輩は王子様役ですごいテンションが上がってる。

翼『鈴、お前も着替えて来いよ!最後は衣装を着て音を合わせようぜ。』

「そうだね!じゃあ、着替えてくる」

翼の提案に賛成した私は、急いでみんなが着替えてた部屋に入ろうとしたらドアが開いた。

「天…先輩…。」

天『あ…。』

天先輩も衣装を着てくれた。衣装姿を見た私は、すごくカッコよくて天先輩から目を離せなかった。

天『じゃあな…。』

「あっ待って…。あの…」

天『えっ?!』

「あの…似合ってます…。すごくカッコよくて…。じゃなくてその…。」

天『は?……ぷっ!あははは(≧∇≦)』

「何?何か面白いことでも?」

天『お前、オロオロし過ぎ…。あー腹痛いww』
「そ…そんな笑わなくてもいいじゃん!!私は天先輩の衣装姿をすごく似合っててカッコいいって言っただけじゃん」

天『俺はどんな服でも似合うんだ。当たり前だろ?』

「すみませんでしたね(ㆀ˘・з・˘)もう!そこどいて!!」

私は天先輩のキザな言葉に腹を立て、天先輩を追い出してドアを閉めた。でも、久しぶりに天先輩と話せた気がする。

天『お前からそんな言葉が聞けるとはね…ぷっ!』

私は急いで衣装に着替えて、音楽室に戻った。この衣装はお姉ちゃんが作ってくれた。この格好すごく恥ずかしい。音楽室に入ろうとするけど、なかなか入りづらい。

翼『鈴何やってー。って!鈴その格好!!』

「よっ翼!!何で…。」

翼『飲みもん買ってきたんだ。それにしてもいいなぁその衣装!かわいい(*^o^*)』

「か、かわ、かわいい?(*´Д`*)」

翼『あぁ(*^^*)ほらほら入るぞ!みんなー鈴の衣装は妖精さんだぜぇ(≧∇≦)』

「あ、ちょっと!翼…。」

音楽室に入るなり、みんなが私を囲う。私はどうしていいかわからず、オロオロしていると天先輩が助けてくれた。

天『ほら!音合わせるぞ!』

みんな『は〜い』

そして練習が再開され、私たちは本番を迎えた。その日の夜、久しぶりに池でバイオリンを弾いた。

♫〜

私は演奏してると、天先輩の衣装姿を思い出した。好きと気づいてから、天先輩のことが気になって気づいたら、視線はいつも先輩に向いている。

何であんなキザな奴、好きになっちゃったんだろ…。

「秀ちゃん…。私はどうしたらいいの?」

『お前っていつも兄貴のことばっかりだな。』

「天先輩!」

天『兄貴はカッコいいからな!わかるぜ』

「天先輩も秀ちゃんと同じくらい、カッコいいよ!」

天『い、いきなりなんだよ!』

「いや…その…。何でもない。それよりも明日のイベント頑張ろう!」

天『……。頑張るじゃダメだ!!』

「え…?」

天『お前は頑張らなくていい。頑張るのはお前には必要ない。ただお前は無邪気にメロディーを楽しめばいい。』

「先輩…。」

天『じゃあな…。』

先輩は部屋に戻った。

頑張るではなくメロディーを楽しむ…。
天先輩の言葉にはいつも安心する。

やっぱり天先輩が好きなんだ。



明日、イベント終わったら先輩に気持ちを伝えよう。




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