由良先輩はふしだら


「今日は本当に、ありがとうございました」


ペコっと先輩の前で頭を下げる。


「いや、今日のは全部、宙が気付いてしてくれたことだし。俺は何にも」


「由良先輩が私に駆け寄ってくれた、そのことがもう、すんごく嬉しいので!」


少しでも私を心配してくれて、それだけで、すごく幸せだ……なんて。


前の私なら自信満々にそう言えていたはずなのに。


恋をすると欲張りになるって、本当だ。


自分には釣り合わない世界の違う人だって思っていたのに。


隙あれば、もっと先輩とどうにかなって欲しいなんて。


「今日は早めに体休めてね、じゃ」


私の頭に優しく手を置いてそう言ってくれる先輩が、振り返ろうと踵を返した瞬間。

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