私の知らないあなた
「合宿のときは君よりも重い荷物を背負って登るんだよ」

 そう笑う優斗の背中で私はただただ申し訳なくて恥ずかしくて全身が火照った。
 父親以外の男性の体にこんなに近く触れたのは初めてだった。

 私は二つ年上の優斗に恋をした。

 そして優斗は私の初めての恋人になった。

 優斗の通う大学は誰もが知る有名大学で、見あげる高さにある端正な顔立ちと登山で鍛えられたたくましい体をもつ優斗を私の女友だちの誰もが羨ましがった。

 今まで知らなかった音楽、飲んだことのないカクテル、行ったことのないレストラン、そしてときどき二人で山に登った。

 そこで見た初めて見る満天の星空。

 今まで自分がいた世界がちっぽけに感じた。



 私にとって優斗はまるで初めて見る海だった。
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