恋の人、愛の人。
・恋も愛も
RRR、RRR、…。

「はい、営業一課。…おはようございます。…はい、武下はまだ。…はい、畏まりました。…失礼します」

また…部長…。

「どうした、桃子君」

…課長。下の名前で呼ばないで欲しい。…。

「何でもありません」

「あ…あ、そうなのか」

狼狽えちゃって何よ、始業前に鳴る内線に、急に興味持ったみたいに近寄って来て…。何かあるの?


「おはよう、早いわね。はぁ、私ちょっと遅くなっちゃったのよね」

「あ、武下さん。ちょっといいですか?」

「ん?はいはい?」

通路に連れ出された。


「梨薫さん、ちょっと耳を貸してください」

「え、な〜に?」

ごにょごにょと話された。

「…そう。有り難う」

「まだ就業時間前だからこのまま…」

そう言ってフロアをちらっと見た。

「そうね。じゃあ、行って来るわね、有り難う」

そうは言ってもそれ程時間の余裕は無い。
急いで部長室に行った。


コンコンコン。

直ぐドアは開いた。あっ。え?わっ。

「武下君」

中に引き込まれた。

「あ、あの、部長、後輩が何だか気を利かせて課長には伝わらないように教えてくれて。それで…来たのですが」

何でしょう…。

「ああ、…そうなのか」

「あの、何か用が…」

少し間があって抱きしめられた。…え?

「はぁ…今朝はどうしたんだ?また会わなかった…」

「あ、すみません。ちょっとゆっくりしてしまって」

陽佑さんと話していたからだ。それでも遅刻をした訳ではない。謝ると変な気がする。それに、これは…。

「あれ程、朝、顔を見るのが嬉しいと言ってあったのに…」

あ、それは…部長だからって、それは部長の都合で…。色々、私もあって、きっちりほぼ同じ時間に来るのが難しい事もあるんですから。

「部長…あの」

「はぁ…朝、少しでも会いたい。私はたがが外れてしまっている。もう抑えが効かない。通路で会わなかったら、朝ここに来てくれないか」

「え゙っ?」

そんなこと…それは…朝の逢瀬もどき…、とでもいうのでしょうか?…できませんよ。

「会いたいんだ…梨薫…」

…ドキッと言うより瞬時にズキッとした。ギュッと強く抱きしめられた。…部長ー、いくらなんでも、これは…強引過ぎるのでは…。

「ぶ、部長、…あ、の。困ります」

こんな事。
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