あの日みた月を君も
カスミと教室に戻った。

担任はまだ来ていなかった。

ヒロは既にイスに座って文庫本を読んでいる。

窓辺の光がヒロの前髪を揺らしていた。

ゆっくりとヒロの席に近づいて行った。

あと少しの所まで来た時、顔を上げたヒロと目が合った。

ヒロの目って、ドングリみたい。

黒目が大きくて、キラキラしていた。

普段は前髪で半分ほどかくれてるからそんなに黒目の大きさは気にも留めなかったけれど。

なんだか、目も丸くて月みたいだ。

そんなことを考えていたら、おかしくなってつい吹き出した。

「人の顔見て笑うなんて失礼な奴だな。」

ヒロは軽くにらみながらも口元は笑っていた。

「ごめんごめん。ちょっとね思い出し笑い。」

「思い出し笑いする奴はいやらしいって聞いてことあるけど。」

妙にまじめくさった言い方をしたヒロに、不覚にもうけてしまった。

カスミが私の腕を軽く突いた。

あ、そうそう。

「あのね、大山くん。例の天体観測部の話なんだけどさ、カスミに話したら興味持ってくれて。明日か明後日の放課後あたり都合はどう?」

ヒロはようやく私の横にひっついていたカスミの方をちらっと見やった。

「ああ、いいよ。どっちでも。」

私はカスミの方を向きながら、「じゃ、早めに明日にしとく?」と尋ねた。

カスミは頬を染めながら「うんうん」と2回頷いた。

「じゃ、明日の放課後で。こないだの駅前のカフェで待ち合わせでいい?」

「いいよ。」

そう言うと、ヒロはまた読みかけていた文庫本に視線を落とした。

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