さくら 咲け
「麻奈ちゃん」
休み時間。教室のドアのところから名前を呼ばれて、そちらを向くと、良太くんが立っていた。
「どうしたの?」
良太くんの方へ行って聞く。
「いやぁ、なんか沙奈が、麻奈ちゃん元気ないって言ってたから。」
「沙奈、そんなこと良太くんに言ってたんだ。」
「うん。クラスではよく話す方だからね。
ところでさ、」
言葉を切って、私の耳に顔を近づけると、良太くんはこう呟いた。
「麻奈ちゃんってさ、圭介のこと、好き?」
「っ、」
突然言われた言葉に驚いて、一歩後ろへ下がる。
「な、んで」
「ん~?強いていえば、直感?
俺、こういうの鋭いからさ」
だとしたら良太くんの直感は大当たり。
「バレバレ、かなぁ?」
「いや、バレてないと思うよ?少なくとも沙奈と圭介は気づいてない。」
「そっか」
それが分かればいい。
それさえ、わかっていれば、大丈夫。
「沙奈には、絶対言わないで」
「わかってるよ
圭介には?」
「...言わないで」
「どうして?」
「伝えるつもり、ないから」
「叶うかもしれないのに?」
「それは、ない」
「なんでそう言いきれる?」
「...直感。」