さくら 咲け



「麻奈ちゃん」


休み時間。教室のドアのところから名前を呼ばれて、そちらを向くと、良太くんが立っていた。



「どうしたの?」



良太くんの方へ行って聞く。



「いやぁ、なんか沙奈が、麻奈ちゃん元気ないって言ってたから。」


「沙奈、そんなこと良太くんに言ってたんだ。」


「うん。クラスではよく話す方だからね。

ところでさ、」



言葉を切って、私の耳に顔を近づけると、良太くんはこう呟いた。



「麻奈ちゃんってさ、圭介のこと、好き?」



「っ、」



突然言われた言葉に驚いて、一歩後ろへ下がる。



「な、んで」



「ん~?強いていえば、直感?
俺、こういうの鋭いからさ」



だとしたら良太くんの直感は大当たり。



「バレバレ、かなぁ?」



「いや、バレてないと思うよ?少なくとも沙奈と圭介は気づいてない。」



「そっか」



それが分かればいい。



それさえ、わかっていれば、大丈夫。



「沙奈には、絶対言わないで」



「わかってるよ

圭介には?」



「...言わないで」



「どうして?」



「伝えるつもり、ないから」



「叶うかもしれないのに?」



「それは、ない」



「なんでそう言いきれる?」



「...直感。」



< 73 / 160 >

この作品をシェア

pagetop