愛され婚～契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます～

彼にもらったドレスを脱ぎ、会社の制服に着替える。
シンデレラの夢の時間が本当に終わってしまったようで、悲しい気持ちに包まれた。

首にスカーフのリボンを巻き、私は普段の私に戻った。
鏡に映る自分を見つめていると、いつしか涙が頬を伝っていた。

彼に、自分と本物の関係になることを考えたかと尋ねたが、どうやらその可能性はないようだ。

初めから叶うはずなどないとわかっていたけど、やはり悲しみに襲われた。

「ダメね。……割り切らないと」

そう決めて、無理やり笑顔をつくってみる。

限られた時間しかなくてもそばにいたい。
もう少しだけ、あなたの婚約者でいたい。

せめて、すべてを終えるときに後悔しないほどに、思いきり奏多さんを好きでいよう。

「奏多さん」

ドアに向かって声をかける。

「終わったの？開けてもいい？」
静かにドアが開いて、彼が顔を出す。

「ただの私に戻っちゃった。誰にも会わないように、こっそりと船を降りないと。釣り合わないと言われて、さらに批判されるわね」

おどけて言うと、彼は緩く首を横に振った。

「君を輝かせているのは、服装や飾りじゃない。ドレスを脱いだあとが、本当は一番瑠衣らしくてかわいいんだ。君の魅力がシンプルに引き立つからね。俺はそれを知ってるから。誰がなにを言おうが、心配しなくてもいいんだよ」