福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

「いや、若くないですよ。30歳過ぎた未婚者なんて、残り物同然です」

 男はともかく、女は三十路ともなれば消費期限間近の残り物だ。

 私がまだ20代になって間もない頃、近所に住んでいた30歳のお姉さんが〝女は20代が勝負なのよ〟と耳にタコが出来そうな程言っていたけれど、私も、その意味がようやく分かった気がする。

 歳を重ねるにつれて出会いの場は減るし、恋愛の仕方も分からなくなって身動きが取れなくなる。いつの間にか、恋愛に少し臆病になっていた私は、気づけば消費期限間近の残り物になっていたのだ。


「そうかな?」

「そうです。残り物です」

「はは。それなら、俺も残り物ってことになるね。でも、俺、麻美ちゃんみたいな人なら、残り物だとしてもラッキーだな。ほら、残りものには福があるって言うし」

 一瞬、枝豆を取ろうとテーブルの中心に伸ばした手の動きが止まった。

 西宮さんの言葉は、時々心臓に悪い。私みたいな残り物をラッキーだなんて、彼は何も意識せずに言っているのだろうけれど、あまり異性に褒められることのなかった私の心臓は、素直にドキッとしてしまうのが憎い。

「それを言うなら、今日の婚活パーティーで一番の福は西宮さんだったんじゃないですか? 実際に廊下では西宮さんの争奪戦みたいになってましたし。私、今まで何度も婚活パーティー参加してきましたけど、その私が見ても、外見は断トツでしたよ。福があるにもほどがあります」

 
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