福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

母の一言に、西宮さんがちらりとこちらは顔を向けた。

目をくるりと見開いた彼の表情は、〝言ってなかったの?〟と言っているように見える。


「すみません。申し遅れましたが、副社長を務めさせてもらっています」

「ふ、副社長⁉︎」

西宮さんの返答に、母が大きな声を出した。

「麻美ってば、どうして言わなかったの!こんな重要な事を」

驚いちゃったじゃない、と目を丸く見開いている母が視線を私に向けた。私は、その視線から逃げるようにしてテーブルを見ると、ゆっくり口を開いた。


「……私にとっては重要な事じゃなかったから」

「え?」

母がまた更に目を丸くする。隣を見てみると、母だけではなく西宮さんまで目を丸くして私を見ていた。


「西宮さんが、副社長だから好きになったわけじゃないから。彼と一緒にいたいと思った理由は他にたくさんあるから、だから、あえて伝える必要はないと思ったの。それに、先入観無しに〝副社長〟ではない、〝西宮幸人〟さんの事をちゃんとお父さんとお母さんに知って欲しかった」


〝副社長〟の彼も、もちろん魅力的だ。だけど、それより先に知った〝西宮幸人〟という男性は、それ以上に魅力的で、私が強く惹かれた人。

全部ひっくるめて私の好きな人だけれど、それでも、〝副社長〟という肩書きが無くたって私は彼を好きになったことに違いない。それを、母や父に知ってほしかった。

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