福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

「あ、都合悪かった?」

「うーん……私は大丈夫だし行ってみたいところなんだけど、西宮さん最近忙しいみたいで」

我が家に挨拶に来てくれた土曜日以来、なんだか少し、西宮さんに避けられているような気がする。

会社ですれ違うと、いつもならこっちへ駆け寄って来て話をしてくれるのに、最近は遠くから笑って手を振ったり挨拶をする程度。

その程度は全然いいのだけれど、昨日、今週末の予定を聞いたら〝ごめん。今週末は会えない〟なんて返事が返ってきたし、〝ちょっと忙しいからしばらく二人で会えないかもしれない〟なんて言葉まで付け加えられていた。

来週末だって会えるかわからない状況に加え、メッセージのやりとりもいつもより遅く感じてしまうし、考えだしたらネガティブな思考ばかり働いてしまう。


「はあ」

「なに、溜息なんてついてどうしたの」

「挨拶に連れて行ったのがいけなかったんだ」

お父さんのバカ、と呟いてデスクの上にうつ伏せる。すると、隣から「え!もうそんなところまでいったの⁉︎」と驚く優佳の声が聞こえて来た。


「ちょっと、待って。ちゃんと話聞きたいから休憩ルーム行こ」

「えっ、ちょっと」

突然デスクから立ち上がった優佳が私の腕を引いて歩き出した。

自動販売機の設置された休憩スペースの椅子に二人腰掛けると、優佳は興味津々そうに身を乗り出して来た。


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