214草子
悩み続ける先輩
【悩み続ける先輩】


 クラスで一番可愛くて家がお金持ちのあの子は、ひとつ年下で人気者の彼に高級チョコを渡すらしい。昼休みに自慢げに話しているのを聞いた。

 私は、かばんの中に入った安物のチョコを渡すかどうか考えた。

 値段よりも可愛さを重視してしまったけれど、本当にこのチョコで良かったのだろうか。ホワイトチョコよりもビターチョコのほうが良かっただろうか。ラッピングはこれで良かったのだろうか。青いものをよく身につけている彼には、赤いリボンよりも青いリボンのほうが好みだろうか。

 考え始めてしまったら動けなくなって、放課後になっても、陽が暮れ始めても、ずっと椅子に座っていた。



< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop