人間複製機
確かにあたしはジッと弘樹の事を見てしまったけれど、それだけで好きとか嫌いとか決めつけられる筋合いはなかった。


「別に好きとかじゃないから」


冷めた声でそう返事をすると、マナはつまらなそうに唇を尖らせた。


「でも弘樹って2学期になってから急にあか抜けてカッコよくなってきたよね」


熱っぽくそう言ったマナに驚いて、あたしはもう一度弘樹を見た。


さっきまで持ち物ばかりを見ていたから、本人の顔なんてちゃんと見ていなかった。


マナの言う通り、一学期頃から比べると随分と明るくなった印象はある。


髪の毛もいじっているのか、確かに悪くない外見をしている。


「中途半端な時期の高校デビューだよね」


マナがそう言って笑う。


一学期と二学期の間でなにかあったのかもしれない。
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