アウト*サイダー

* 一回休み



 廊下の窓の向こうに見える、絵の具みたいな青さをした空。下を見下ろすと、グラウンドの砂が太陽に反射しているのか、見ていると目が痛くなって前に向き直った。

 あと少しすれば夏休み。

 未だ続く上靴みっけ遊びや、放課後の掃除当番で私以外全員ストライキ、肥大化が止まらない噂。休み期間に入れば、それらと暫く離れることが出来る。

 二時間目の後の休憩でトイレに行った帰り、用を足して機嫌良く歩いていると、前方に紙の束を持った背の低い子がよろよろ歩いていた。

 分厚い紙束。それを見て、つい先日、数学担当の教師から渡された夏休みの課題を思い出す。

 木村先生は気の良いおじさんだけど、ずぼらな所があってすぐに生徒をこき使う。その課題も、重いからという理由で私のクラスの男子に教室まで運ばせていた。

 おそらく、あの子も木村先生に頼まれたのだろう。でも、女の子一人で運ぶのは無理がある。手伝いに行こうと足を速めた。その瞬間、彼女に誰かがぶつかって、体勢を崩した体は傾き、そのまま課題が床に散らばっていた。

 あちゃー、遅かったか。

 駆け足で彼女の元に近寄る。当然、ぶつかった人も拾うのを手伝うはずだと思っていたのに、誰も近付いてこないことを不審に思って周りに視線を配れば……

「またかよ」

「どんくさいよな、ほんと」

 一部始終を見ていたはずなのに、誰もが彼女に冷たい目を向けて、ぶつかった男子さえ知らん顔して教室に入っていく。
< 251 / 466 >

この作品をシェア

pagetop