アウト*サイダー

 焦る私の口はぎこちなく開き、言葉を探しながら声を発する。

「教室…………戻らない?」

 深く探るのは得意じゃないから。

 だって、深く探ってしまえば、彼の気持ちを何とか私から遠ざけようとまた傷つける。そうすれば今度こそ彼は私から離れてしまう。

 臆病者。

 卑怯者。

 私が私を嘲笑う。

 でもね、と私は私に言う。

 私は決してケイが嫌いな訳じゃない。だから、この今の二人の関係を保つ努力をしようとしてるだけなのだと。

 だけど、私の言葉にケイは一度目を伏せて、それから首を横に振った。

「俺はいいや。戻りたいなら、どうぞ」

 真っ直ぐな目を向けられる。

 私は立ちすくむ。

 “どうして……?”

 言葉にできないモヤモヤした感情が渦巻く。

 私は何か間違った答えを出していた? 

 再び目を閉じた彼。

 急に遠ざかったような距離。

 意味がわからない。

 だけど今更聞けない。

 踏み込めない。

 だから、私は彼に背中を向けて歩き出した。……耳を澄ましても、追いかけてくる足音も、何も、なかった。
< 56 / 466 >

この作品をシェア

pagetop