【短編】きみはだいきらいなソーダ味


「お前今、絶対馬鹿にしたろ」

「してないよ。それより溶けるから食べなよ」

「言われなくても食うし! それよりなんでお前のないんだよ」


真夏の太陽は容赦がない。夏村が文句を言いながら口を開けた中からはいつもより溶けてべたっとしたアイスが顔を出す。

 もう嘘を吐くのはやめよう。今からなんて遅くても、間に合わなくても、振り向かせるために。


「ソーダ嫌いなんだよ」

「はあっ!? なに馬鹿なこと言ってんだよ。いつも食べてんじゃん!」

「いつもくれるから食べてただけ」


悪気もなく、当然のように言う私に夏村は狼狽える。


「なんだよそれ。嫌いなものわざわざ食うなんてドMかよ」

「だって、夏村がいっつも美味しそうに食べてるからさ」

「そりゃあ俺は大好物だからな。それで? 俺にいつも嫌いなもの渡されて美味かったのかよ」


不服そうな、不機嫌そうな物言いに笑ってしまう。私が言えなかったのは、あまりに自分が美味しいと勧めたせいかもしれないとでも思ってるらしい。

なんだよ、とでも言いたげな夏村に近づいて、その手に握られたアイスの一口目を貰う。


「あっ、お前!」


口の中の熱で溶ける爽やかなブルーの味を味わった。


「うーん、いつもと一緒かなあ」

「いつもと一緒ってなんだよ」


溶けた雫が手に流れそうになる前に舐めて、夏村は私より大きな一口でがぶりと食べる。


「夏村の味」


この爽やかな青はきみそのものだと思う。でも、そこまでは言わなかった。


「なんだそれ、わっけわかんねえ」

「分かんなくていいんだよ」


まだ分からなくていい。何れきっと、分かる。ううん、気付かせるから。それくらい頑張るから。そして、いつか、いつか、振り向いて。これはわたしの宣戦布告。





Fin




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