お前の涙、俺だけに見せて


お姉さんはベットに潜り込んだ。


私は敷いてもらった布団に入る。



「花ちゃんは、好きな人いないの?」



暗闇の中、天井を見上げていたら、お姉さんにそう聞かれた。


いくらなんでも、唐突すぎやしませんか。



「残念ながら、いません」


「それもそっか。こんな状況になって一番頼りたいのは、好きな人だもんね」



それは同意しかねるかな。


ただ単に、私の恋愛スキルが低くて、理解出来なかったっていうのもあるけどね。



「花ちゃんが千秋を頼ってくれてよかった。私、花ちゃんのこと好きだよ。花ちゃん、いい子だし、可愛いから」


「それはないです。お母さんが死ぬ直前に喧嘩しちゃって、結局謝れなくて……こんな私が、いい子なわけないです。ましてや、可愛いなんて……」


「花ちゃんは謙遜するなあ。まあ、いつか気付けばいっか」



私、謙遜してるつもりないのに。


事実を言ってるだけで……



「花ちゃん……私の、妹に……ならない……?」


「なりません!ってお姉さん?」



飛び起きて否定するも、お姉さんはベットの中ですやすやと寝息をたてて、それを聞いていなかった。



「寝ながら話してたなんて……おやすみなさい」



大人しく布団に戻り、眠りについた。

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