ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
(フゥ…)

一息つくと、ミライが僕の隣に、上半身をこっちに捻って横向きにソファに腰掛けてきた。その顔は今にも泣き出しそうだ。

「ん、ミライ、どうかしたのかい?」

顔を覗くように問い掛けると、ミライが僕の手を取ってきた。

「うん。何だか、ずっと悲しそうにしてるから心配…」

と呟くような声。

「えっ、そう?」

聞き返すと、ミライがコクリと頷いた。

「うん。ずっと眉顰めてる」

そうか。

「眉か…。わかっちゃうんだな」

呟いて返すと、ミライが身体ごと僕に向き直った。

「ねえどうして?何をそんなに考えてるの?」

小首を傾げた問い掛けに、ふと宙を見上げて答えた。

「うん、あの事故が無かったら、こんなに寂しくならずに済んだのに、ってね」

「こんなに寂しくならずに?」

と眉を顰めて聞き返してくるミライ。

「そう。あの事故のせいで、今こんな事になってるんだ。テレビで記者会見するハメになったのも、クワンの意識が戻らなくなったのも、ロイが動かなくなったのも、」

とふと、本田君のセリフが頭に浮かんだ。
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