夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
【4月中旬/港街のパン屋】

開店前。
白い調理服に着替えてバンダナをして、いつものようにお店に並ぶパンを作る仕込みの作業。
朝一での出勤は自分だけの為、私は一人きりの調理場で、生地をこねて形を整えながらずっと考えていた。


娘、ヒナタへの接し方について……。

誕生日会の夜。
”パパを嫌い”と言ったヒナタに、手を上げてしまった私。
泣き叫ぶヒナタを上手くあやす事が出来ず、港街に戻ってきても、その溝は縮まる事がない生活が続いていた。

必要以上の会話はしてくれず、あの明るかった娘がすっかり大人しくなってしまった。


どうしたら、いいんだろう……?

思わずハァ〜ッと溜め息を漏らすと、調理用のテーブルを挟んだ反対側に、私を見つめる人の気配を感じハッと我に返る。
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