夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「……そんな表情されたら、……。
慰めていいのかな、って……。僕でいいのかな、って……勘違いするぞ?」

冗談っぽく笑いながら頭をかくその姿に、嫌な気持ちは湧かない。

ユウさんを愛しているか?と問われたら、正直分からない。

……けど。
弱い私は、ズルくて、逃げようとしていた。


「……帰るわ。
また、明日職場でな」

そう言って、横を通り過ぎて玄関に足を進めるユウさんを……。
私は追い掛けて、止めた。


「!っ……アカリ?」

背中のシャツを両手で握り締める私に、ユウさんはゆっくり振り返ってくれる。


……大丈夫。
きっと、好きになれる。

ユウさんの瞳を見つめ返しながら、私はそう心の中で呟いた。


そして……。


「……行きます」

「え?……」

「ユウさんと……。一緒に、行きます。
っ……よろしくお願い、します」

ヴァロンとの想い出がたくさん詰まった、静かな家の廊下。
私は、ユウさんにプロポーズの返事をした。

……
…………。
< 25 / 322 >

この作品をシェア

pagetop