悪魔の囁きは溺愛の始まり
「副社長、お疲れさまです。」

「忙しそうだな、一花。」

「副社長も。」


私の隣に腰掛けた兄を見れば、ネクタイを弛めて寛ぎモード姿が目に入る。


「早く帰らないの?」

「ああ。」

「お義姉さんと上手くいってないの?」


兄の視線が真っ直ぐに向けられ、その瞳に動きが固まってしまった。

冷たい視線が突き刺さっていたからだ。


「一花、ここは会社だ。言葉を慎め。」

「ごめん。」

「変な噂でも立てられれば、会社に影響が出てくる。経営に携わらなくても、一花には常識だと思っていたが?」

「ごめん。」

「一花、噂が親父の耳に入ってる。」

「噂?」


訳が分からなくて兄に首を傾げて聞いた。

『噂?』


「男関係で噂が立ってる。オフィスで一悶着あったんだろ?」


兄の言いたい事は理解した。

濱田さんの事だ。

私と蒼大さん、それに渡部さんの関係が噂になってるようだ。
< 107 / 200 >

この作品をシェア

pagetop