悪魔の囁きは溺愛の始まり
見上げた蒼大さんの顔は無表情で怖い。


「一花、俺を騙した?それとも間違えただけ?」

「………。」

「一花?」


無言の私に蒼大さんが一歩近づく。


「一花、騙したのか?」

「違う。バカンスの恋は『ひとときの恋』でしょ?蒼大さんも同じでしょ?」

「俺は伝えただろ?帰国してからも会いたいって。本気だと一花は気づいていた筈だ。」

「ナンパだよ?それもハワイのビーチで。本気なんてあり得ない。」

「毎日、毎日、恋人のように過ごしたのを忘れたか?」

「それは………。」

「贈り物も気に入ってくれたか?」


贈り物…………、きっと別れの朝に貰ったネックレスの事だ。

朝は早く部屋を去りたくて気づきもしなかった。だけど波羽に指摘されて気づいたネックレスだ。

ずっと思い出として家に置いてある。


「一花、騙したのか?」

「………そうよ。」


私は大きな溜め息を吐いた。今更、弁解は通用しないだろうから。
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