お見合い結婚時々妄想
その綺麗な人は、微笑みを浮かべながら近づいてきた

すると相川さんが私と彼女の間に立った
まるで私を彼女から隠すように


「進藤係長、何か?パーティー会場にいた方がいいのでは?」
「皆川部長の奥様に挨拶をしたくて、抜け出してきたんです。今日はとてもお世話になったから」
「それなら必要ありません。早く戻った方がいいですよ。これからDインテリアと関わりが深くなるのは、海外事業部ではなく、マーケティング部でしょう?その係長が支社長の挨拶を聞いてなかったと知られれば、奥さんの努力も台無しです」
「ええ、そうですね。でも相川さんがそこを退いてくれれば、すぐに済むことなんですけど?」


暗に退きなさいって言ってるんだわ
2人は睨み合っていたが、私は腹を括って立ち上がって彼女に近づいた


「祥子さん!」

相川さんは慌てて私を止めようとしたけど、いいんですよと言って、彼女の前に出た


「はじめまして、皆川祥子です。あの……」
「はじめまして、F社のマーケティング部第1課係長の進藤奈南美です」
「まだお若くて、女性なのに係長をやってらっしゃるなんて、凄いですね」
「いえ。今日は我が社の為にご苦労をおかけしました。お陰で、これからも、Dインテリアとも友好な関係を続けられそうです」
「そうですか。でも私は、主人に頼まれただけですから」
「では、ご主人に頼まれなかったら、ここには居なかったと?」


そんなの当たり前でしょう
と言いたかったが、そこは我慢した
この人、さっきからどうしたいんだろう?
相川さんの言う通り、早く戻ればいいのに
私が言葉に詰まっていると、相川さんが口を開いた


「進藤係長、奥さんはF社の社員でもなんでもないんですよ。何を言ってるんですか。それに、お礼の一言でも言ったらどうですか?」


進藤さんは相川さんを一瞥したが、すぐに私の方へ視線を戻した


「先ほどの奥様の言葉からは、ご自分の意志がないように思えたので……」
「進藤係長!失礼ですよ!」


なんで初対面の人にここまで言われなきゃいけないのよ
しかも、さっきから何が言いたいんだろうこの人は

と、疲れた頭でグルグル考えた結果、1つの答えにたどり着いた


「あなた、慎一郎さんのことが好きなんですか?」
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