お見合い結婚時々妄想
パーティー当日
俺は初めて部長の奥さん、祥子さんに会った
背は高く、取り立てて美人と言うわけではないが、色白で可愛らしい人
表情豊かで、癒し系とでも言うのだろうか?
この人が、部長の奥さんやってるのか?
と言うのが第一印象だった
でも、2人が一緒にいるところを見ると、本当にしっくりくるのが不思議だった
何が?と言われたら、説明は出来ないが、お似合いの夫婦だった
しかもパーティーでの祥子さんは、完璧だった
部長が言った通り、出席者のデータは頭に入っていた
ちょっと戸惑っていても、部長と俺がさりげなくフォローすると、すぐに対応していた
コックス支社長とも、冗談を言うほど、流暢な英語を披露した
本当に凄いと思った
あんな短期間で、これだけ完璧に対応出来るなんて、想像以上だった
そして、あの進藤係長を黙らせるなんて……
癒し系だと思っていたが、ちゃんと芯がある、強い女性だった
部長夫妻を送り出した後、俺はパーティー会場へと戻った
すると案の定、三浦常務が近づいてきた


「相川、あの女は何者だ?」


鼻息荒いんだよ、タヌキ親父


「あの女とは?」
「決まっているだろう!皆川のカミさんだ!」
「普通の専業主婦だと、皆川部長は言っていましたが?」
「普通の専業主婦な訳ないだろうが!あんな……」


ああ、面倒くさい


「皆川部長に頼まれて、事前に出席者のデータを渡してはいました。ただそれだけですよ」
「それだけだと?」
「ええ、それだけです」
「なっ……」


おいおい、顔が真っ赤だぞ
倒れたりしないだろうな?


「部長の奥様はこういう機会が増えるだろうと、分かっていらっしゃいました。これからも、今回のように誰かが突然言い出そうとも、完璧に対応されるでしょうね」
「相川、お前……」
「でも、奥様はF社の人間ではありません。会社の都合で引っ張り出すのは、必要最低限でお願いします」


そうして、頭を下げて常務の前から去った
三浦常務にだけは、一言言っておきたかったんだ
ああ、すっきりした!
そうして、俺もパーティー会場を後にした
週明けの月曜日
見るからにご機嫌な部長から呼ばれた

「相川、先日はありがとう。お陰で助かったよ」
「いえ。それより、祥子さん大丈夫でしたか?」
「ああ、次の日熱を出したが、もう元気になった。疲れが出たんだろう」
「そうですか。相当緊張してましたもんね。それと、三浦常務なんですが、しばらく何も言ってこないと思います」


部長は、ん?と片眉をあげたが、ふっと笑って、そうかとだけ呟いた


「そうだ相川。祥子が今回のお礼をしたいって言ってるんだけど」
「そんな!俺は仕事をしただけですから、気にしないで下さいって言っといて下さい」
「僕もそう言ったんだが、それじゃ祥子の気が済まないらしい」


部長は苦笑しながら言った


「でも、お礼と言われても……」
「考えたんだが、僕の家に祥子の手料理でも食べに来ないか?祥子も『自分の取り柄は料理だけだから』って言ってるんだ。そんなことはないんだけどね」


それは、ノロケですか?


「はっきり言って、祥子の料理は美味いぞ」


そう言って得意気に笑う部長
それを聞いた第1課の藤川さんが、食い付いた


「部長!私も!私も奥さんの手料理食べたいです!」
「いや、藤川さん。君は関係ないでしょ?」
「いいじゃないですか、相川さん。部長、ダメですか?」


部長も苦笑しながら答えた


「じゃ、他の皆にも声掛けて、来れる人は来たらいい。最近皆忙しかったからな、歓迎するよ。人数分かったら報告してくれる?藤川」
「はい、分かりました!やっぱり女は男の胃袋掴むのが大事ですから!」
「……何言ってるんだ?藤川」


早速藤川さんは他の皆に声をかけて、人数を集めていた
部長は祥子さんに連絡をとったらしく


「祥子も楽しみにしてるって言ってるよ」


と、楽しそうに言っていた
しかし……
うちの連中が、祥子さんと一緒にいるときの部長を見たら、どんな顔をするんだろうかと思うと、俺も楽しみになってきた
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