失恋の傷には媚薬を
略奪



言い逃れはできない
そう思ったのか
ポケットに入れたピアスの留め具を出し
私のと一緒に返してきた



「…ごめん。」



『ごめん、て何?』




達彦だって男だし人間だ
一度の浮気くらいあるだろう
でもそれが
そうであって欲しくない人だったら…
友達や親友なら
縁を切ることもできるだろう

よりによって…、よりによって…



『…なんで詩織お姉ちゃん、なの?』



そう言葉に出した時
膝の上で握った手が少し震えている



達彦は下を向いたまま話してくれた
高校生の時、私と詩織お姉ちゃんを見かけた時に一目惚れをした、と
その時は何もできず
ただの憧れ的な感じだったんだろうと
思っていようだ

< 61 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop