×princess misfortune×
長身美形でありながら素晴らしく人当たりの良い彼は、爆発的な人気者。



つまりは、



わたしの正反対のところに居る人間。



まさか、この期に及んで、


「人の物盗ったりしたらダメだろ?」


とか言ってくるんじゃないでしょうねぇ~?



これだから人気者の優等生ってのはキライ。



そんな彼の手を振り払い、自転車を漕ぎだそうとした瞬間、


「俺が漕ぐ。後ろ乗って」



わたしからハンドルをひったくり、さっさとサドルに跨ってしまった。



「ちょっと!!」



わたしが見つけた獲物なのにっ!



盗んだっていう後ろめたさから、声を大にしては言い返せないところが不甲斐ない……。



そんなわたしの胸中を見透かしたように、にっこり笑った樹野くんは、



「早く乗らなきゃ遅れるよ?」



後ろに乗れと促してくる。



クラスメートのしかも、こんな人気の高いヤツとお近づきになるのは癪で嫌で嫌で仕方ないけど……、


背に腹は代えられない。


「お互い様、だからね?」



遅刻寸前はアンタもなんだから、ここは共同正犯。


そう言い聞かせて、


わたしは生まれて初めて二人乗りをした。
< 5 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop